君たちはどう生きるかの『わらわら』は何を意味する?|子どもに説明できる答え」

「ねえママ、『わらわら』ってなに?」
映画『君たちはどう生きるか』を観たあと、
ふと子どもに聞かれてドキッとした…そんな経験、ありませんか?

ふわふわと浮かぶ白くて小さな存在――

劇中で「わらわら」と呼ばれたその生き物たちは
印象的な場面で現れ、眞人(まひと)を導いていきます。

ストーリーの中で「熟すと空を飛び上の世界の人間として生まれる」って意味のことは言ってたけど・・・

でも、

「あれって結局、何だったの?」
「どういう意味があるの?」

って聞かれると、
言葉に詰まってしまう大人も多いはず。

実はこの「わらわら」、
宮崎駿監督がこめた
“命”や“生まれ変わり”のメッセージが
深く関わっています。

今回の記事では、
映画の中で描かれた
「わらわら」の役割と
意味をわかりやすく解説してみました。

さらに、

子どもにどう説明すればいいか?

のヒントもご紹介します。

「なんとなく覚えてるけど…」

というパパ・ママにこそ読んでほしい
「わらわら」の正体に迫ります。

そもそも「わらわら」って何だった?映画のあのシーンをおさらい

『君たちはどう生きるか』の中で
「わらわら」は非常に神秘的な存在として登場します。

眞人(まひと)が“あちらの世界”に足を踏み入れ
塔の中を探索する途中で初めて出会う小さな白い生き物たち。

丸っこい体に黒い瞳を持ち、
ふわふわと浮遊する様子がどこか愛らしく、
でもどこか不気味でもあります。

劇中で「わらわら」と名付けられた彼らは
塔の頂上を目指す旅のなかで重要な役割を果たします。

中でも印象的なのは、
彼らが「上に登っていく存在」であり
「人間として生まれ変わる存在」として描かれるシーン。

塔の管理者である“大叔父”が説明する形で
明かされるその役割に、
驚いた方も多いのではないでしょうか?

この設定は、単なるファンタジーではなく
宮崎駿監督が長年の作品で描き続けてきた
「生と死」「命の循環」といったテーマと深く関わっています。

どこで登場した?重要なシーンを振り返る

「わらわら」が本格的に登場するのは、塔の内部の“重力が反転したような世界”です。眞人がその異空間で不安げに進んでいると、静かに、でもたしかに空間を漂う無数の白いものたちが目に留まります。

彼らはまるで幽霊のようでもあり、胎児のようでもある…。しかも「この子たちは上に行って人間として生まれていくのだ」と説明されると、観ているこちらも一気に現実との接点を感じてしまう。あのシーン、映像だけでも鳥肌モノでした。

そして、その「わらわら」たちを傷つけようとする異形の存在や、彼らを守ろうとする大叔父の行動によって、彼らが「大切な存在」であることが強調されていきます。

監督自身も「正体は決めていない」?

実は、宮崎駿監督は「わらわら」の正体について明確な設定を発表していません。それでも映画の描写やセリフから読み解くと、どうやら彼らは「これから命としてこの世界に生まれようとしている魂」=「魂の原型」のような存在だと考えられています。

これは、過去のジブリ作品――たとえば『千と千尋の神隠し』に出てきた“カオナシ”や、『となりのトトロ』における“まっくろくろすけ”といった「見る人に想像の余地を与える存在」と似た立ち位置にも感じられますね。

わらわらは何のメタファー?「命」「生まれ変わり」「魂」の解釈

「わらわら」は単なる“かわいいキャラ”ではありません。その正体は…といっても明確な設定は語られていませんが、宮崎駿監督のこれまでの作風と照らし合わせると、かなり深いメタファーが込められていることが見えてきます。

“これから生まれてくる命”の象徴

映画内でのセリフ――「あの子たちは、これから人間として生まれるのだ」――この一言が、すべてを象徴しています。
つまり、わらわらたちは“魂の状態”、あるいは“命の源”のような存在として描かれている。

宮崎作品では、“この世とあの世のあいだ”を描くことが多々あります。たとえば『千と千尋の神隠し』の湯屋の世界も、生死の境にあるような空間でしたよね。そして『君たちはどう生きるか』では、この塔の中に、まだこの世に生まれていない命が集まっている、という設定を暗示している。

これは輪廻転生の考えにも近いですが、仏教的な厳密な解釈というよりは、「命とは何か」を子どもたちにもわかるように寓話的に見せている印象です。

なぜ“白くて丸い”のか?

わらわらのビジュアルも、メタファーとして非常に強力です。
・白=無垢、純粋、始まり
・丸=胎児、未分化な存在、完全性

これらの記号を組み合わせることで、「命がかたちを持つ前の状態」を表しているようにも感じられます。実際、どこかで見たことがある…と思った方も多いはず。そう、胎児のエコー画像や、受精卵のイメージにも似ていますよね。

そして、わらわらたちは感情をほとんど表現しません。ただ静かに、目的地へ向かう。言葉も発さず、自分の使命だけを持っているような振る舞いが、「人格が宿る前の魂」のように映るのです。

“命の重み”と“守るべきもの”

塔の中で、わらわらたちは脅かされる存在でもあります。
暴力によって、ねじれた存在が命の源に襲いかかろうとする。そのとき、主人公の眞人や大叔父がとった行動は、「命を守る」こと。

これは、作品全体のテーマ「どう生きるか」とも重なります。
――命とはなにか。
――なぜ命を大切にするべきか。
――そして、生きることは他の命とどう関わるのか。

わらわらは、私たち大人がすでに忘れてしまった「命の始まり」の記憶を思い出させてくれる存在なのかもしれません。

“人間として生まれる”ってどういうこと?宗教や神話との関係も

「わらわら」は“人間として生まれる前の存在”とされていますが、ではこの「人間として生まれる」とは、一体どういう意味なのか?
このテーマには、宗教的な思想や神話的な構造が深く織り込まれています。

輪廻転生との関連性

もっとも連想しやすいのが、仏教の「輪廻転生」という考え方。
この世に生きる存在は、生死を繰り返しながら魂が転生していく…という思想です。

『君たちはどう生きるか』では、わらわらが塔から“登って”いくという描写があります。これは、まるで天界や現世に向かって進むようにも見えますよね。
つまり、塔の中が「魂の待機場」、あるいは「冥界」のような空間であり、そこから“生まれる”ことで現世に現れる。これは明らかに、輪廻転生のビジュアル的な再解釈です。

ただし、本作の宗教観は仏教に限られたものではありません。むしろ、複数の宗教や神話が混ざり合ったような印象を受けます。

ギリシャ神話とのリンク?

注目したいのは、「塔」という存在。
塔=高くそびえ立つ構造物=天と地をつなぐ象徴という点で、バベルの塔やヤコブの梯子のような神話的構造を想起させます。

特に、塔の最上部に行くことで何かしらの“転機”が訪れるという構図は、まさにイニシエーション(通過儀礼)です。
わらわらがそこから“上へ行く”というのも、神や世界の意思によって選ばれ、次なる段階へ進む存在であることを暗示しているのではないでしょうか。

そして――これはかなり仮説めいていますが――わらわらたちは、魂が未分化の状態であり、そこに“何か”が注がれることで人格が宿る、という構造にも見えます。
ギリシャ神話における「プシュケー(魂)」のように、命のエネルギーそのものが「人間」になるための器として扱われている可能性も。

子どもたちへのメッセージとしての“生まれる”

ここまでやや難しい話をしてきましたが、最後に大事なのは、“子どもたちにとってどう響くか”という視点です。

眞人が「命を選ぶ」「命を守る」ことを選択する展開は、ただのファンタジーではなく、「これから命を育てていく存在としての覚悟」を象徴しているようにも見えます。

そして、その中心に「わらわら」がいる。
つまり、わらわらは観客自身――とくに“親になる可能性のある存在”――に向けた、命と向き合うことの覚悟を問いかけている存在とも言えるのです。

子どもにどう説明する?わらわらの意味をやさしく伝える方法

映画『君たちはどう生きるか』を見終わったあと、子どもからこんな質問が飛んでくるかもしれません。

「わらわらってなに?」「なんで上に行ったの?」

……正直、大人でも戸惑いますよね。でも安心してください。難しく考えなくても、子どもにとって腑に落ちる「説明の仕方」がちゃんとあります。

わらわら=生まれる前の“たましい”だと伝える

まず一番わかりやすいのはこう伝えることです。

「わらわらはね、まだ赤ちゃんになる前の“たましい”なんだよ。あの塔のてっぺんから生まれて、どこかのママやパパのところに赤ちゃんとしてくるの」

すると、子どもは「へぇ~!」と目をキラキラさせるかもしれません。実際、映画の中でも「上に登って人間になる」というセリフがありますから、この解釈はかなりストレートで納得しやすい。

ただし、もう少し年齢が上の子や、好奇心の強い子には、少しだけ深掘りしてあげてもいいかもしれません。

「いのちはつながってる」という視点を足す

たとえば、こんなふうに言ってみてください。

「わらわらは、生まれる前のいのち。だから、みんなも昔はわらわらだったかもしれないんだよ。今もどこかで生まれる準備をしてるわらわらがいるかもしれないね」

こう言うと、子どもは「じゃあ、妹になるかもしれないわらわらもいる?」とか聞いてくるかもしれません(笑)

こういったやりとりが、子どもたちの「いのちって何?」「人間ってどうやって生まれるの?」という根本的な問いへの入り口になるんです。

「君はどう生きたい?」につなげていく

そして、もし時間と気持ちに余裕があれば、最後にこんなふうに投げかけてみてください。

「君は、どう生きたい?」

映画のタイトルそのままですが、この問いこそが宮崎駿監督が一番伝えたかったことです。
わらわらのこと、塔のこと、死んでしまったお母さんのこと――全部がこの問いへのヒントになっているのです。

映画の不思議な世界観をそのまま受け取るのももちろん良いですが、「親子で話すきっかけ」にすることで、この作品はもっと身近なものになります。

まとめ|“わらわら”は、命をつなぐ存在だった

最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
「わらわら」は、生まれる前の“たましい”のような存在

塔の上に登る=人間としてこの世に生まれるという象徴

輪廻転生や神話の影響も垣間見えるファンタジー的演出

子どもには「命のはじまりのかたち」としてやさしく伝えるのがコツ

宮崎駿監督は、抽象的なビジュアルと言葉を使って、「命」や「人間の在り方」という大きなテーマを私たちに投げかけてきました。
だからこそ、答えは1つではなく、それぞれの家庭や親子の会話の中で見つけていくものなんだと思います。

――そしてその会話の中で、
あなた自身の「どう生きるか」も、また見えてくるのかもしれません。

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